秋田こまっち。

秋田の方言メモ 第16話〜第18話

第16話.ケートラ

 ケートラとは軽トラックのことです。この発音が基本じゃないでしょうか。携帯電話のことがケータイになったのもこの流れと同じでしょうね。この前数ヶ月ぶりに会社のロゴが入っていない、おそらく自家用と思われるケートラが走っているのを発見しまして懐かしく思えてしまい……。唐突ですが、この話を。

 秋田県の農家には基本的に車が2台、もしくは3台あります。「セダンとケートラ」「ワゴンとケートラ」「セダンと軽自動車とケートラ」の組み合わせなどが多いですね。つまり「何かとケートラ」の組み合わせになっているんです。私の実家の場合は「パルサー(日産)」「ハイゼット(ダイハツ)」の2台です。ちょっと前までは「ハイゼットのバン(ダイハツ)」を加えた3台でした。あらやだ。なかなか渋い組み合わせ。私には真似ができないですね。父のセンスのよさには脱帽(笑)

 この前ケートラの話を東京出身のIくんにしたところ「ケートラぁ?(笑)」と言われる始末。秋田県民は誰一人としてケートラを小ばかにしません。ケートラが大好きな人ばかりなので。ケートラって意外とすごいんですよ。冬にスキーキャリア無しでスキーに行けますし。でも他にはすごい例が思い浮かびません(涙)

 秋田県では免許を取りたての人が最初に乗る車にもなっていますね。車両が小さいのみならず、バックする時に後輪の位置が手に取るように分かります。いわゆる「おもちゃっこ」です。ギアチェンジ、ハンドリング、加速、視界……、どれをとっても「おもちゃっこ」です。これでしばらく練習してから何か自分の好きな車でも買えばいいんです。

 あと「ケートラとじいちゃん」=「the田舎」という感じもします。「じいちゃん、迎えに来る」と話している中高生がいたら、かなりの高確率でケートラが来ます。ちなみにうちのじいさんは免許ナシ。大正の香りを感じます。

 ケートラはいい面も多いのですが、悪い面もあります。といいますか、農家の人は悪い面があるにもかかわらず仕事のために乗らなければいけないのが現状です。危険。これが最大のネックですね。見れば分かりますが、運転者をガードしてくれるのが鉄板1枚。新規格のケートラが発売されましたが、やはり安全面はまだまだですね。じいちゃんと中高生のコンビを事故から守るためにも、何とか更に改善をしてもらいたいです。また、うちのケートラは非常に尻を振りやすいです。「2WDで雪道」という条件下では、ケートラは構造上後ろがやっぱり軽いので確実に尻を振ります。あとどうしても街乗りには不向きですね。加速が悪くセカンドでねばれなかったり、パワステではないので右折の際にハンドルを腕力で持っていったり。

 とはいっても、ケートラは大好きです。いい思い出ばかりですね。ケートラを運転する父の横顔が印象的です。家族に年に数回しか会わなくなると、やっぱりさびしいもんですよ。次はいつ会えるでしょうか。お盆に会えなければ、しばらく会うのはおあずけですね。こんなサイト作っちゃっていますけど、毎日が暇ではないので。なんだかすご〜く暇そうに思われるでしょうけど。

 04.06.24

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第17話.しもう

 昼はいつもの食堂で食べ、友人Yくんと話をしていました。色々と雑談を。今日正午あたりから昼すぎにかけて強い雨が降りました。その雨のことや、参議院選挙、年金、市町村合併などの話をしていました。日本の行く末を案じ、清き(?)一票を投じるようなそんな年になってしまいました。母から「成人式の案内が来たど」というメールも来ましたし。ちなみにYくんはソフトボールをやっていまして、こんな会話が。

「こんな雨じゃできないもんな。ボールに水しもうと使えないしね」
「しもうってなんだよ。また秋田弁かよ」

 と。またって…。

 今まで「しもう」は標準語だと思っていました。辞書で調べてみたところ、やはりありません。(関連リンクExcite エキサイト 辞書:国語辞典)ですが「しもる」で調べたところ、気になる語がありました。「しもる」は水が入ってきて沈むという意味みたいです。うーん、かすっていますがちょっと違いますね。「しもう」は標準語では「しみる」の意味です。この単語はさすがにノーマークでした。いかにも標準語っぽい秋田弁のように私は思うのですが……。私は自分から出身を言わないと分からないほどクリアな標準語をしゃべりますが、こうしたところでちょっとしたボロがついでてしまいます。

 他にも雨関連の話題を少しだけ。

・「あめ
 雨のことです。何のことはありませんが、発音がちょっと違うんですね。標準語だと「あ」にアクセントがあるはずですが、秋田弁は「め」にアクセントがあります。それだと「雨」と「飴」の区別ができないと思う方もいらっしゃるでしょう。心配ご無用です。「飴」は「あめっこ」になりますので。大館には「あめっこ市」という祭りがありますし、湯沢には「いぬっこ祭り」がありますし、秋田県では「あねっこ餅」なるものも売っています。「〜っこ」という単語はたくさんありますね。ビッキーズというお笑い芸人がいます。「飴」という文字入りのはっぴを着て飴をばら撒くコンビです。彼らは「飴」を「あめちゃん」と言っています。関西の人は「飴」を「あめちゃん」と言うのかどうかよく分かりませんが、それと同じ感覚でしょう。

・「がばっと」「じだっと
 「雨でがばっとぬれらがしてきた」「雨でじだっとぬれらがしてきた」などと使います。びしょびしょにぬれた時に使われる言葉です。標準語でも「がばがば」「じっとり」なら使うのではないでしょうか。私にはかなり濡れた感じが伝わってきますが、皆さんはどうでしょうか。似た雰囲気の単語で「がっぱり」もありますが、これは全く違う意味です。「ゆぎみぢでおらえの車がっぱりはまった」などと使います。(標準語訳は「雪道でうちの車がずっぽりはまった」)「がっぱり」は冬によく使われることとなる単語ですね。秋田県民は冬によくはまります。

 余談ですが、案内が来たという成人式について。秋田県では成人式をなぜか19〜20歳の時と、20〜21歳の時に行う市町村の2パターンに分かれます。私と同じくらいの年の人にはこの違いのため何かと問題が生じます。私の出身のところでは市町村合併が予定されていて合併前後で成人式を行う年齢が変わってしまうんです。さて私はどうすれば……。でも実家に案内が来たとのことなので今年行うことになるのでしょう。もしかしたら成人式を2回できるという貴重な機会を得られるかもしれませんね。ですが、合併した理由を考えるとそんなことは微塵も期待できないでしょう。はてさてどうなることやら。

 最近暑いのでよく汗をかきます。そのときに汗が「しもって」きました。汗でひりひりしてきたことをこう言います。こんな「しもう」の使い方を思い出したので忘れないうちに書き足しておきます。やはり「しもう」は「しみる」とほぼ同義と考えて間違いはなさそうです。

 「しもう」=「しみる」
 「あめっこ」=「飴」
 「がばっと」=「がばがば」
 「じだっと」=「じっとり」
 「がっぱり」=「ずっぽり」

 04.07.31

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第18話.コンビニ

 いつものように、いつもの食堂で昼食。その時にふとコンビニの話に。コンビニに行くことはよくある上、私たちには関心のある話題ですね。話題になることも多いです。その時に以前から気になっていたことをぽろっと口にしてみました。

「ここってコンビニに入った時に『いらっしゃいませ』って言われるよね」
「秋田だと『いらっしゃいませこんにちは』って言われるんだけど」

 と聞いたら、青森(津軽地方)出身の友人が同意してくれました。秋田と青森にはつながりを感じます。この時雑談をしていた4人の出身は秋田、青森(津軽)、岩手、三重となっています。秋田は当然ですが私。このことに同意したのは1人だけでした。他の2人はそんなことは知らないと。「いらっしゃいませこんにちは」ですが、「いらっしゃいませ」「こんにちは」と2つの語に分けることなく、一気に言い切ります。最近秋田に住んでいないので現在の事情はよく分かりませんが、5年くらい前からそうでした。何となく心に残っているということは当時から気になっていたということでしょう。どのコンビニなのかまでは覚えていません。

 話は変わります。コンビニについてですが、以前Iくんが興味深いことを言っていました。

「コンビニでさ、おにぎり買うじゃん」
「うん、で?」
「そのとき『温めますか?』って言われない?」
「うん」
「ありえなくない?」

 私の知っている限りコンビニの店員は普通「温めますか?」と聞いてきます。店員が言うのを忘れたり、達観したおばちゃんだったりしない限り。Iくんは、弁当は温めるみたいですけど、「おにぎりを温めるのはありえないこと」と言っていました。これは非常に興味深いですね。コンビニはやれマニュアルだ、やれファミコン言葉だ、とやゆされがちです。Iくんのおかげでマニュアルも地域の実情に合うように色々と気を使っていることが判明しました。

 店員だって好きで「いらっしゃいませこんにちは」と言っているのではないはず。その言葉の意図が分からないまま「そう言え」と言われているから言っているのでしょう。「日本語の乱れだ」などと店員に主張する人は論外。おにぎりを「温めますか?」と言う判断基準も店員にあると思いますし。暑かったら言わないでしょうし、寒かったら言うでしょう。「マニュアル」うんぬんと店員に言う人もこれまた論外。

 コンビニだって大変なのですよ。コンビニでバイトしている友人が多いので苦労話を聞かされます。私はここで何故に彼らを弁護してやってるんでしょうね(笑)彼らから聞いた話ですが万引きで帳尻が合わないことも多いし、酒に酔った人に絡まれ殴られることさえもあるとか。本当にお疲れ様です。

 最後に秋田のコンビニ事情について。秋田県南では「ローソン」「サンクス」「サークルK」「デイリーヤマザキ」が勢力を拡大しています。「ファミリーマート」「セブンイレブン」「ミニストップ」は全く記憶にはありません。「セブンイレブン」はCMをしていたのですが、どこにあるのか分かりません。「セブンイレブン」のサイトで秋田県の店舗検索をしたところ……、秋田県の項目がありません。あと、数kmおきにぽつぽつと散在しているのが普通です。コンビニに歩いていくなど秋田では邪道。車で行きましょう。

 一人暮らしを始めた時に「ファミマ行かない?」と言われ、「え?」と沈黙してしまったことがあります。その人の歴史の中にはファミリーマートがしっかりとあり、私には全く無かったのですね。このあたりにも言葉の面白さ、難しさがありますね。

 04.06.29

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