秋田こまっち。

秋田の方言メモ 第19話〜第21話

第19話.リフォーム

「リフォーム完成した!センサーつきトイレ〜〜!^^」
 という年甲斐も無いメールが40代半ばの母から。何のセンサーなのかは全くの謎です。どうやら実家をリフォームしたみたいです。

 リフォームした理由が本当に笑えます。宮城県で大きな地震があった際、なぜか実家の風呂の壁のタイルに亀裂がはしりました。仙台の私のボロアパートも何にもなかったのに……。あともう一つ大きな理由があります。トイレがブレーンバスター垂直落下式のものだからです。意味はどうぞご自由に想像なさってください。

 私が知っている限り、実家はこれまで二度リフォームしたことがあります。平成3年の台風19号で、縁側のガラスがはずれて壊れた事があります。その時に家の周囲のガラスというか雨戸というかそれら一式を頑丈な物に変えました。もう一度は、ぼろぼろになった居間の天井とふすまを。二度目のリフォームは人目を気にした見掛け倒しのものであることは、当時小学生だった私にも十分理解できました。父と同じくらいの年の実家ですが、果たしてリフォームではなく本丸に手を出すのはいつの日でしょう。もしかしたら今回のリフォームであと10年ねばれば、私が建て替えをしてくれるとでも思っているのでしょうか……。言わずもがな、その意図が見え隠れ。

 リフォームなんてめったにすることではないので、リフォーム関連の秋田弁を紹介します。

・「ぼっこれる
 私の家の風呂の壁が「ぼっこれだ」ので今回リフォームしたわけです。「ぼっこれる」は「壊れる」という意味です。「ぶっこわれる」に近い響きなので納得しやすいかと思います。ちなみに「壊す」ことは「ぼっこす」と言います。「ぼっこす」は使い方が難しいかもしれません。ちょっとだけ壊れた場合にしか使えないからです。風呂の壁のタイルに亀裂が入るとか、何かパーツがぽろっと取れてしまう(ゴミ箱のふたがはずれてはまらない等)とか、電気系統のトラブルで車が動かないとかです。確かに壊れているのですが、こわれても外見がとどめられている場合に限り使えます。風呂が崩れ落ちてしまったり、パーツが取れるのではなく粉々になってしまったり(皿を落として割ってしまう等)、車が事故ってつぶれてしまったために動かなかったり……。こんな場合は普通「ぼっこす」とは使いません。

・「ほごす
 リフォームするために実家の風呂とトイレは「ほごす」ことになったのです。標準語にも「ほぐす」という言葉があります。(関連リンクExcite エキサイト 辞書:国語辞典

ほぐす【解す】
・もつれて固まった状態を、といてもとへもどす。結ばれたり織られたりしているものをさばいて分ける。「魚の身を―・す」「織り糸を―・す」
・緊張・疲労・怒りなどを、おだやかな状態へもどす。「気分を―・す」「旅のつかれを―・す」「肩のこりを―・す」

 ですが「家をほぐす」と標準語で言わないでしょう。私は聞いたことがありません。でも古い家や壊れた家を解体して更地にするのは、ほぐすの1番目で何となく納得できます。「まっさらな状態にすること」や「バラバラにする」ことが秋田弁の「ほごす」に近い感覚のように思われます。「じでんしゃどごほごす」は「自転車を解体する」という意味になりますし。似ているようでも、秋田弁の「ほごす」は標準語の「ほぐす」とは全く違う語のような気もしますね。よく分かりません。難しいです。助け舟を出してくださる方やご意見、ご指摘をしてくださる方がいるとうれしいです。

・「でゃぐ
 「大工」のことです。標準語と発音がちょっと違うだけです。ちなみに実家にはどこぞの匠は来ていません。

 04.06.30

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第20話.秋田の食べ物

 お盆に帰省しました。そのとき食べたものの紹介などをさらっと。

・「ぼだっこ
 「でぎだど!ままけ〜!」(標準語訳は「できたぞ!ごはん食べろ〜!」)とばあさん。

 行ってみると「ぼだっこ」が昼食のおかずでした。「ぼだっこ」とは「塩鮭の切り身」ですが、なんだか少し塩分濃度が違うような気がします。「ぼだっこ」の方がしょっぱいと思います。でも「塩鮭」の塩分が「ぼだっこ」と同じになっても「ぼだっこ」とは言わないでしょう。「ぼだっこ」は「ぼだっこ」なのです。

・「でごづげ
 「でごづげどなすづけもけばいべ?」(標準語訳は「たくあんとなす漬も食べればいいんじゃないの?」)とばあさん。

 「でご」とは「大根」のことです。単に発音が訛っているだけです。秋田には「いぶりがっご」なる食べ物もありまして、たくあんには似ていますが風味が違います。「でごづげ」は「たくあん」、「いぶりがっこ」は大根の燻製の漬物(表現はおかしいですけど…)のことです。「いぶりがっこ」は今では全国的に有名になりました。いぶすことで独特の風味が生まれています。どんな味に似ているかはちょっと表現できません。「がっこ」(「いぶりがっこ」は通称「がっこ」)は他のどんな食べ物とも一線を画しています。あと、秋田弁の漬物の発音には特徴がありまして「つけおの」「つきょうの」のように聞こえます。

・「たばご」に「ときみ
 「たばごにときみもけ!」(標準語訳は「おやつにとうもろこしも食べろ!」)とばあさん。

 「たばご」とは「タバコ休み」のことでそのものズバリの意味なのですが、秋田では転じて「おやつの時間」などの意味でも使っているみたいです。「たばごだ」(標準語では「おやつの時間だ」)とは使います。「たばご」には「おやつ」そのものの意味はなく、「たばごけ!」と言ったら笑われます。「おやつを食べて!」ではなく「タバコ食べて!」という意味になってしまいますので。

 「ときみ」とは「とうもろこし」のことです。私の家では「ときみけ!」というと、必ず茹でたとうもろこしが出現します。ざるにわんさか。茹でる以外の選択肢は無いに等しいです。

 記憶によると「とうもろこし」を北海道では「とうきび」と言ったはずです。北海道で「とうきびチョコ」なるものを買ってきて、食べたことがあります。「ときみ」と「とうきび」はそっくりですね。北海道と秋田にも方言に関しては関連性がありますね。

・「えご
 私の実家ではお盆のときや朝食のときによく食べます。海草がぶつぶつと入った寒天みたいな緑色の食べ物で、しょうゆをつけて食べます。お盆や朝食によく登場するのはどことなく精進料理っぽい雰囲気が漂っているからでしょう。小さいころにはなんとも思いませんでしたが、大人好みの渋い味。最近これがローカルな食べ物だと気づきました。「えご」と線香は本当にナイスコンビです。

・「みんじゃ」で「すいが
 「みんじゃですいがはやせで!秋田でねばこういうごどでぎねぇよ!」(標準語訳は「台所ですいかを切って!秋田じゃないとこういうことできないよ!」)とばあさん。

 「みんじゃ」とは「台所」の意味です。由来はよく分かりません(汗)台所を水周りと言うことですし、「みず」に関係しているから「みんじゃ」なのかなと推測することしかできません。

「毎日すいかをたらふく食べられます!」
「家は10部屋以上あります!」
「車が3台あります!」

 などと言っている人を見かけたら、「こいつお金持ちなんだ、感じ悪いな」と気を悪くなさらないで下さい。間違いなく秋田などの田舎出身です。それに、すいかの手伝いのバイトをしている高校生を見るのも、「すいが食ってしょんべではるで」(標準語訳は「すいか食べておしっこがでるよ」)などと言っている人を見るのもまた一興です。

 そういえば「ではる」で思い出しましたが、小学生のときに極度の緊張からか「今度大会にではることになりました」なんてステージ上で言ってしまって笑われている奴もいましたね。「ではる」なんて秋田らしからぬ、京都っぽい響き。

 「ままざめさねね、ばんげのしゃっこなんとすべ?」(標準語訳は「ご飯の準備しないと、晩のおかずどうしよう?」)なんて言う母の買い物につきあい、「ままけ〜!」と叫ぶ、そんなばあさんの声を聞きながらテーブルにつくと「ぼだっこ」だったり。

 これだ……。この感じだ……。そちらはいつもと変わらぬ日常の1コマなのかもしれませんが、私にとっては帰ってくる場所がここなんだなと実感する1コマです。

 まあ、ばあさんの老婆心も困ったものです。これぞ本当の老婆心といったところですね。

 04.08.23

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第21話.はらっちぇ

 先月の終わり頃、髪を切りに行ったときの話です。そこの美容師さんとはちょっと親しい(少なくとも私はそう思っています)ので、色々と話をします。検索してもどうせばれないだろうなんて思ったので、このサイトの話を少しだけしました。

「ホームページに今はまっているんですよ」
「え?どんな内容のホームページなの?」
「秋田弁とか、色々変なことを書いてるんですよ」
「私も秋田弁知ってます!大曲の友達が『はらつえ〜』ってよく言うんですよ〜」
「何か食べてるときとか!」
「そうそう!」

 そんな意図は全く無かったのですが、幸運にも「はらつえ〜」というこのサイトに書くネタをゲットしてしまいました。でも「はらつえ〜」だと私の地方ではネイティブな秋田弁とは言えませんし、相手にうまく通じないかもしれません。私の場合「はらっつぇ」や「はらっちぇ」という発音をします。これは「お腹がいっぱい」という意味の言葉です。

 以前も述べた通り、秋田弁では形容詞の語尾を「e」にしてしまいますから、「つえ」という言葉から連想されるのは「つよい」と言う言葉です。「つよい」という読みの単語には「強い」という言葉しか辞書にありません。「お腹が強い」というのは、はたしてどういう意味でしょうか。それが「はらっちぇ」となるわけですが、「お腹がいっぱい」という意味とどう結びつくのでしょう。どうも結びつかないですね。

 でもちょっと考えると、結びつかなくてもいいような気がしてきました。お腹のなかが満たされることに重点を置くか、お腹がふくれてパンパンになることに重点を置くかの違いによるものとも考えていいでしょう。ひらがなの「あ」は「安」から生まれて、カタカナの「ア」は「阿」から生まれたのと同じで、同じことを違うように表現すれば、全く違うようになるということですね。「安」と「阿」は結びつきませんが、どちらも「a」という音には結びつきます。「お腹が強い」と「お腹がいっぱい」は結びつきませんが、どちらも「たらふく食べたときの体の状態」と結びついています。なんだか屁理屈のようですが、自分を納得させておきます。

 その「大曲出身の誰か」と同じように、私も「はらっちぇ」はずっと使い続けたい表現です。「お腹いっぱい」ではどうもしっくりしません。こういった形容詞は気持ちがこもってなんぼですから、そんな自分のお腹に対し「はらっちぇ」と言ってあげたいです。「お腹いっぱい」だとどうもまだ食べられるような雰囲気がして、自分の気持ちに嘘をついているような錯覚に陥ります。お腹いっぱいなのに、お腹さんに申し訳ない(笑)

 話は変わりますが、「お腹いっぱい」と言おうとして「お腹へった」と言ってしまう人がいるのはなぜなのでしょう。ついさっきまで「お腹がへった」状態だったので、脳が勘違いを起こしているのでしょうか。そういうことを言う人に限って、食い意地のはっているような人だったりするからまた気になります(笑) そんなことを言っておきながら自分が間違ったらどうしよう、なんてことは杞憂にすぎないといいんですけど(汗)

 「はらっちぇ」(「はらっつぇ」)=お腹いっぱい。

 04.09.16

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