秋田こまっち。

秋田の方言メモ 第31話〜第33話

第31話.わらし

 「わらし」(標準語訳は「子ども」)は思ったことを口にします。だからすぐに喧嘩になったり、対立関係になったりします。「そんなことで恨んでいるの?そんなことで怒っているの?」と呆れることもしばしば。「○○と知り合いだから、△△は嫌い」などが例に挙げられますね。本当にかわいいですね。若いっ!

 「○○買ってよ〜!」と小さい頃、親に頼むのですが、基本的にダメだと言われました。とりあえずそれがうちの教育方針でした。「我慢のできない人間はろくな人間にならない」と口酸っぱく言われました。そのおかげでほら、こんなに我慢強い人になりましたよ。

 思い通りにならないと「むつける」子どもがいます。「むつける」とは「ぶすっとする」「拗ねる」といった意味です。自分の要求を通そうと、自分をかまって光線を発射するんですね。でもかまってもらえるはずもありません。

 または「だんじゃぐ」になる子どももいます。全力で泣き出してみたり、八つ当たりしてみたり。「だんじゃぐ」とは「乱暴な」という意味です。「だんじゃぐ」は「まげる」ものなので、「だんじゃぐまげな!」(標準語訳は「乱暴なことするな!」)と怒られて、わっと泣き出します。「だんじゃぐ」な子どもは泣き出すことが多いのかな。自分の要求が通らないから。頼みごとの捉え方がまだ分かっていないんですね。

 最後には「もぞこぐな!」(標準語訳は「訳の分からないことを言うな!」)と一喝されて、はい終了。「もぞこぐ」とは「訳の分からないことを言う、する」という意味です。

 「もぞこぐ」は中学生くらいまで「もじもじしている」の意味だと勘違いしていました。車の中でおしっこを我慢していて、もじもじしていたら、「なに、もぞこいでんなだ?」(標準語訳は「何、訳分からないことやってんだ?」)と言われたことがあるからです。小さいころに小安峡温泉から実家までおしっこを我慢したことがありまして……。それがものすごい印象が強かったんですね(笑)

 繰り返しますが、「もぞこぐ」とは「訳の分からないことを言う」「訳の分からないことをする」という意味ですからね。「もぞ」はどういう意味か分かりませんでしたが、「寝言」という意味のようです。(関連リンクYahoo!検索)寝言自体、基本的に訳の分からないものですからね。

 「最近の子どもはませている」なんて話を聞きますが、こんな子どももまだまだいるから大丈夫です。子どもから子どもらしさが失われていなければ、心配ないでしょう。

 私は「子どもを諭すお仕事」をしているのですが、中学生は本当に様々です。「カトゥーさんって彼女います?います?(笑)」という話を好んでしてくる人もいれば、「ポケモン全部レベル100まで上げたし(笑)」という話を好む子どももいます。年は同じでも、考えていることは全然違うんだなとつくづく思います。私が中学生だったらどちらを好んでいたのでしょうか。うーん、どちらかというと……前者(笑)

 でも中学生とのお話は刺激的です。「カトゥーさんの服って○○の奴ですよね?そのTシャツはどこで買ったんですか?」と話されて服関係で論破されそうになったり、「ACミランが…」と話されてサッカー関係で論破されそうになったり。負けたくないから、ちょっと頑張ってしまいます。普通の中学生には何においても負けたくないんです(笑)

 子どものことを考えてみたり、知り合いも結婚するみたいですし、もうそんな年ですよ。間違いなく思考は親サイド。あの……私、物凄いピッチで枯れているんですけど(笑)

 「わらし」=子ども。
 「むつける」=ぶすっとする。拗ねる。
 「だんじゃぐ」=乱暴な。
 「もぞこぐ」=訳の分からないことを言う。訳の分からないことをする。
 「もぞ」=寝言。

 04.10.10

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第32話.まめ

 ちょっと風邪気味です。しばらく風邪をひいていなかったので、油断していました。昨年の四月以来です。病院嫌いなので、病院にはめったなことが無ければ行きません。なので今回も行きません。コンタクト購入時の視力測定で行ったことは覚えていますが、それ以前はいつ行ったのか、さっぱり思い出すことができません。

 病院にはうれしいことよりも、かなしいことの方がきっと多く起こっています。そういった雰囲気もどことなく漂っています。人一倍心の変化が大きく、感傷的になってしまうので苦手です。風邪ごとき、となめてかかると痛い目に遭うこともあるでしょうが、風邪に間違いは無さそうですから。

 私はあまり自分のことをアピールするようなタイプではないので、いつものごとく平静を装っているつもりです。そんななか、今日「風邪ひいた?」と聞かれることが二度ありました。なぜかうれしくてたまりませんでした。私の脳内辞書には「髪切ったの?」が言われて嬉しい言葉として登録されていて、事あるごとにそのページをめくってきましたが、「風邪ひいた?」も登録してみようと思いました。

 体調が悪いとそれがどうも文章に反映されるようで、普段も特にキレは無いのですが、それ以上にキレがありません。また考え方もネガティブになっていくようで、話す人話す人、私を不安げに見ているような……。実際、心はガラスのように脆いのですが、砕け散ったところで問題ありません。キングスライムがいくつかのスライムに戻るだけ。しばらくスライムとして活動し、機を見てキングスライムに戻るという行動を取り続けて今に至ります。「病は気から」は、やはり経験論として語れるレベルにあるのかもしれません。

 さてさて、秋田弁では元気なことを「まめ」と言います。「まめだが?」(標準語訳は「元気?」)というフレーズはお年寄りにとっては大事な挨拶用語です。しょっちゅう会うことは無いのですが、数ヶ月にいっぺんは会う程度の知り合いは秋田では多いものです。「おめなえのじさどばさなばまめでらが?」(標準語訳は「あなたの家のおじいさんとおばあさんは元気でいるの?」)と聞かれたら、よっぽどのことが無い限りは「まめだよ」(標準語訳は「元気だよ」)と答えてあげるのが筋。尾ひれが付いた噂が広まってしまいますので……。

 こんなジョークを聞いたことがあります。海外で交通事故を起こした日本人ドライバーが、「How are you?」と聞かれて、「I’m fine.」と答えたとか。恐らくその日本人は「(事故はしたけど)大丈夫だ」のつもりでそう答えたのでしょうが、事故を起こした時点で明らかに大丈夫ではないので英語の感覚からすればこれは不自然です。ですが、「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫」と答えるのは自然な気がしませんか?これが日本人の感覚。

 「恥の文化」は脈々と受け継がれていくんだなあ、と実感します。バグダッドで起きた「日本人拉致事件」での日本の反応がまさにそうでした。イメージの問題(「オウム関係」「ヒ素関係」はかつてならなかった経緯があります)もあり、「自己責任」は流行語大賞に選ばれるかは微妙ですが、もしかしたらと個人的に思っています。「毒まんじゅう」なんてどうでもいいですから、もっと考えさせられるようなこういった言葉が選ばれることを望んでいます。

 「まめ」を調べてみますと(関連リンク@nifty:辞書)「体が丈夫である・こと(さま)。達者」という意味がありますし、検索してみると秋田県、岐阜県、山口県など様々な県で「まめ」が同じ意味の方言として扱われているようです。これだけの範囲をカバーしていれば方言じゃないとも思いますが、私個人としては秋田県で方言として聞いたことしかなく、標準語の「まめ」を聞いたことがありません。全国各地の有志が方言として「まめ」を取り上げているのは、面白い現象です。

 「まめ」は標準語なのか、それとも方言なのか、それは私のような若造には判定できません。こう迷ってしまうのは「まめ」自体が「地域住民との挨拶の言葉」であって、他の方言と混ぜられて使うことになっているからだと思います。ただ方言と思っておいた方が無難で、「元気」で事足りることをそんなに回りくどい表現しなくてもいいのかもしれません。NHKのアナウンサーに全国規模で「まめ」という言葉を使って頂き、そこをはっきりして欲しいです。ものすごく希望。決して無理な願いではないと思うのですが。

 元気でなくても「元気だよ」と言ってしまいそうな私。そして本当の気持ちを見透かされて喜んでいる私。さっさと元気になって、そんなもやもやもすっきりさせたいです。「病は気から」とも言いますけど、「健全な肉体に健全な精神が宿る」とも言いますし。つまりはどっちかが良くなれば自然といい方向に向いていくということ。心と身体のどちらかをいい方向に進めていければいいんですけど、まずは手っ取り早い方法で。

 「ちょっと風邪ひいた?」と君が言ったから十月十八日は早めのパブロン(関連リンク俵万智

 パブロンと変換したら、パブ論と出てきて妙に焦ってみたり。パブについて語る気はさらさら無いですよ(笑)

 「まめ」=体が丈夫であること、またそのさま。達者。

 04.10.19

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第33話.ひよこはこっこ

 昨日友人たちとひよこについて話す機会がありました。といいますか、ひよこについて一方的にしゃべっていました。

 その人たちはあまり喋るタイプの人たちではなかったので、マシンガントークの復活はしていません。サークルの人たちにどんと喋ることができれば個人的にOKという感じです。こりゃ多分数年がかりですよ。

 ひよこを秋田弁で「鶏のこっこ」「鳥のこっこ」と言うことがあります。「こっこ」は「Cocco」とアクセントが違います。アクセントが無い感じでしょうか。

 秋田弁では子どものことを「わらし」と言うことは以前述べました(関連リンクサイト内リンク)が、そちらは人間の子どもで、「こっこ」は動物の子どもや赤ちゃんに対してつかいます。

 そして「象のこっこ」「キリンのこっこ」と言う事はできるのでしょうが、なんだか不自然です。やっぱり「犬のこっこ」「鳥のこっこ」の方がしっくりくるんです。大きさの問題もあるようです。象やキリンのような大きい動物に対してではなく、犬や猫、鳥などのある程度小さい動物につかってあげるのがいいでしょう。

 「こっこ」からは「べってこい」(標準語訳は「小さい」)というイメージだけでなく「めんこい」(標準語訳は「かわいい」)というイメージも引き出せるので、それもこう意識しておいた方がいいと思います。小さくてもグロテスクな赤ちゃんには使うと変かもしれません。

 …グロテスクな赤ちゃん、自分で言っておきながらこの単語が面白い(笑) グロテスクな赤ちゃんってネオテニーのことでしょうか。ネオテニーは「幼形成熟」「幼態成熟」という意味の言葉ですが、MMR(マガジンミステリールポタージュ)で取り上げていたネオテニーをイメージしてしまいました。アイツは本当に気持ち悪かったです。MMRを夜に一人で読んでいるとゾクゾクしてきて快感でしたね。MMR……分かる人には分かるはず。

 「昨日友人たちとひよこについて話す機会がありました」とさも平然と書いていますが、なぜこの流れになったのか気になりませんか?

 高校の時、同じクラスに「ひよこ」というあだ名の女の子がいたんですよ。時々口をとんがらせているのでそういうあだ名になったのです。「ピヨこ」「ピヨピヨ」と言っている人もいましたけど、個人的には「ひよこ」でした。で、同窓会の時に彼女と会って話したんです。その時に名前が出てこなかったんです(汗) 向こうは完全に憶えていたようですが、本当にごめんね。ひよこ。実は今も名前が思い出せないよ(笑)

 話は変わります。

 PS2版のDQ4にエッグラとチキーラっていうボスがいたんです。多分エッグとチキンをもじった名前の2人なのですが、彼らが「卵が先だ!いやいや鶏が先だ!」ってけんかしていたんです。これについてちょっと一言だけ。

 鳥A(鶏に進化する前の鳥)→卵A→鳥B(鶏)→卵B
 進化は急激に起こるわけではないので恐らくこういった流れです。卵Aを境に進化したということです。すると鶏が生まれる前に卵Aが生まれていますから、卵が先です。

 でも「鶏の卵が先か、鶏が先か」という問題にしたら、これはやっかいです。答えはありません。卵Aの中に入っているのは鶏なのですが、それを産んだ鳥は鶏ではありません。この卵Aを鶏の卵としていいのか、それとも鶏が産んだ卵Bが鶏の卵になるのか、これは定義の問題です。誰かが定義してくれると決まるんです。

 「鶏の卵」は「鶏が産まれる卵」と定義されたら、卵Aが鶏の卵と定義され、鶏の卵が先になります。「鶏が産んだ卵」と定義されたら、同じように考えて鶏が先になります。

 結論。定義を誰か決めてください。個人的にはひよこに決めてもらいたいです。ひよこというあだ名がついているなら、そのくらいの権利は主張してもいいですよ。ひよこには誰も逆らえません。

 本当にごめん、ひよこ。この文章を書き終わったけど、まだ名前思い出せないよ(笑)

 「こっこ」=(動物の)子ども。赤ちゃん。
 「べってこい」=小さい。
 「めんこい」=かわいい。

 04.10.27

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