秋田こまっち。

秋田の方言メモ 第25話〜第27話

第25話.エルダさんのお話

 「ちなみに私は、北海道生まれ北海道育ち。つまり道産子です。北海道でも『ゴミを捨てる』の事を『ゴミを投げる』と言います。『冷たい』は『しゃっこい』と言います。あと、私の祖母は、お金の事を『ぜんこ』と言ってました。ちなみに祖母は道産子です。『まかす』って方言だったんですね!知りませんでした〜私は使わないけど。若い人であまり使う人いないです。たぶん、『まかす』って言うのはお年よりだけだと思います。私の祖母が言ってました。『しゃっこい』とかも若い人はあまり使わないですね

 「あと、椅子の事を標準語では『す』がアクセントですが、北海道では『い』がアクセントです。北海道では語尾によく『だべ』、『だべさ』、『だべや』を付けます。『だべ』とか『だべや』は比較的男性が使う事が多いです。『だべ』、『だべや』に比べ『だべさ』の方が丁寧な感じがします。あと、北海道民じゃない人が北海道訛りを真似る時、『〜っしょ』と語尾につけますが、実際には『〜っしょ』とはあまり言いません。『〜しょ』って言います。例えば、標準語で『違うでしょ』の事を『違うしょ』と言います。『違うっしょ』とはあまり言いません

 掲示板に「エルダ」さんがこんなに長い書き込みをしてくださったので、自分も思ったことを簡単に書きたいと思います。

『冷たい』は『しゃっこい』と言います
『しゃっこい』とかも若い人はあまり使わないですね
 私の地方では「ひゃっけ」「しゃっけ」「はっけ」などといった発音です。秋田弁の形容詞の語尾が「e」の音で終わることが多いというのは以前も取り上げました。私たちのように若い世代は「ひゃ」や「しゃ」の音では発音しませんが、「」というクリアな発音で表現します。よく使う表現で、とっさに口にしてしまうものです。

私の祖母は、お金の事を『ぜんこ』と言ってました
 私の地方でも「じぇんこ」「じぇん」などと言います。私の両親の世代は言うのですが、私たち世代は意識しないと使わない言葉なので、残念ながら消えつつある言葉だと思います。秋田弁の名詞の語尾が「〜っこ」と終わる単語が多いというのも以前取り上げました。

『まかす』って方言だったんですね!知りませんでした〜私は使わないけど。若い人であまり使う人いないです
 「まがす」については以前紹介したとおり、私も方言だったことを知りませんでした。この言葉に対応する標準語が無いので、使い続けることになる言葉だと思います。(関連リンクサイト内リンク

椅子の事を標準語では『す』がアクセントですが、北海道では『い』がアクセントです
 私の地方もそうなっていますね。あと「ズボン」は「」にアクセントがあったり、「シャツ」が「シャッツ」という発音になったりします。後者は言ってしまうと、本当に格好悪いです(笑)

北海道では語尾によく『だべ』、『だべさ』、『だべや』を付けます。『だべ』とか『だべや』は比較的男性が使う事が多いです。『だべ』、『だべや』に比べ『だべさ』の方が丁寧な感じがします
 「んだ」という秋田弁で考えると、「んだべ」「んだべった」「んだぁや」などと言います。神奈川県出身のSMAPの中居くんも「だべ」と言っているので、「だべ」やそれに類する言葉がカバーしている地域はすごく広そうです。ただ中居くんがわざと言っている可能性もあるので、確実な話ではありませんが……。

北海道民じゃない人が北海道訛りを真似る時、『〜っしょ』と語尾につけますが、実際には『〜っしょ』とはあまり言いません
 それは初耳でした。「うまいっしょ」というインスタントラーメンが売られているので、ついついそのように思っていました。TVでつくられてしまった方言は数多くあるのでしょうし、これも氷山の一角と言えそうです。TVドラマや映画の台詞の方言は鵜呑みにしない方がいいようです。ただ「笑ってコラえて(日テレ)」は地元の人の言葉なので大いに参考にしています(笑)

 「エルダ」さん、非常に有益なご意見をありがとうございました。コピーした文章が多く、書くのが楽でした(笑)

 04.09.21

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第26話.「じぇんこ」と「だぢんこ」

 前回のお話の中に「じぇんこ」という言葉が出てきましたが、今回はこのお話をしたいと思います。「じぇんこ」とはお金のことです。

 家族と買い物に行くときには、父か母が「じぇん、おろさねね!」(標準語訳は「お金、おろさないといけない!」)、「じぇん、持ってらが?」(標準語訳は「お金、持ってるの?」)とよく確認作業に入ります。「じぇん」という言葉から「銭」という言葉をイメージできますが、「じぇん」は小銭だけを意味するのではありません。お札にも使える言葉です。

 おそらく「じぇんこ」は「両者が秋田弁を話すと知っている間柄」でないと使う言葉ではありません。つまりはある程度親しい間柄にしか使わないということですが、私が仮に秋田の友人にお金を貸してもらうとすると、「金貸してけれ」(標準語訳は「金貸してちょうだい」)と頼むことになると思います。もちろん借りるのは大金ではなく、数千円くらいですよ。また、当然ですが諭吉さんを借りるときには「金貸してけれ」なんて言いません。もっと丁寧な言葉で頼みます。諭吉さんを人から借りた覚えが無いので、どう頼んだのか、あるいはどう頼むのかは分かりません。ぐだぐたと長くなりましたが、私くらいの年の人は「じぇんこ」という言葉を使わないということです。

 「じぇんこ」が入っているのはサイフですが、私の祖父母はサイフと言いません。発音が違うだけなのですが、「しゃふ」と聞こえます。私の両親は「しゃふ」とは言わず、普通にサイフです。滑舌の問題もあるかもしれませんが、祖父母くらいの年代の人は皆「しゃふ」と言っているように思います。

 余談ですが、滑舌という言葉がその人を試しているように感じてしまいます。「俺を『かつぜつ』としっかり読めるか!読めるならお前は『滑舌』だよ!」という感じで紙面にあぐらを書いているように。「カツレツ」となりがちな私はついそんなことを思ってしまうのです。とりあえず「かつぜつ」よりも、目先の「豚カツ」が大事なのは私だけではないでしょう。アナウンサーの方には死活問題でしょうけどね。

 小さい子どもの頃ですが、親戚の家に遊びに行くと、決まってその家の祖父母が「じぇんこ」をくれました。「このじぇんこでアイスでも買って、け」(標準語訳は「このお金でアイスでも買って、食べなさい」)と言いながら「じぇんこ」を子どもの手に握らせ、ものすごい握力で押さえるのです。そうすると、親は「あや〜しかだねんしごど」(標準語訳は「あらあら、申し訳ございません」)とお礼を言います。そしてそのお金はチェックされ両親の懐に収まることになります(涙)

 そうやってもらったお金は「だぢんこ」といいます。「お駄賃」のことですね。実際にはアイス以上のものを買える金額がもらえるのですが、「アイスでも……」とあえて言うのは、「このお金じゃアイスしか買えないでしょうが」といった、ある意味で自分をへりくだっていることを表現するためですね。あと、なぜ子どもの手にお金を握らせ、その上からぐっと握るんでしょう。特によくしゃべるばあさんの握力には私もびっくりでした。標準語でお駄賃をもらったことがありませんから、どのように言うのか分かりません。「だぢんこ、ける」(標準語訳は「お駄賃、あげる」)は一応このような訳にしておきます。

 「だぢんこ」のほとんどを家族税として徴収されることになると、本当にアイスしか買えなくなります。「このことを予期して『アイスでも……』と言っていたのかもしれない」と年寄りの知恵と経験に裏打ちされた表現に感服しながら、「ババヘラ」でも買うことになる私なのでした。(関連リンク『ババヘラ』オフィシャルサイト〜Babahera.net〜

 「じぇんこ」(または「じぇん」)=お金。
 「しゃふ」=サイフ。
 「だぢんこ」=お駄賃。
 「ババヘラ」=(秋田県内の国道沿いなどで販売している)ババヘラ・アイス。

 04.09.23

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第27話.花札を、てんきる

 花札を知らない方はちょっと困ってしまう内容ですが、なんとかお付き合い下さい。

 最近ルールが人によって違うので、花札で遊ぶのがなかなか大変だということに気づきました。札自体の点数が地方によって違うということはないのですが、ローカルルールが多すぎますね。私の知っている限り聞いたことのない、「月見に一杯」「花見に一杯」という役に苦しめられています。むしろその役がない方がマイナーなのかもしれませんが、「マイナーから見るとメジャーの様式こそマイナー」と思ってしまうのはレイベリングの好例ですね。(関連リンクサイト内リンク

 私の地方(といいますか、私の周囲)ではこだわった配り方をします。三人で遊びますから、三人が輪になります。カードを混ぜる役は前のゲームで負けた人か、じゃんけんで一番負けた人になります。その人がカードを混ぜて、そして全部を揃えて真ん中に置きます。多分不正を防止するためだと思うのですが、置いた札を、混ぜた人以外二人が一回だけ切ります。そして混ぜた人が中央にカードを三枚表向きに置いてから、皆に三枚ずつ裏向きに配ります。また中央にカードを三枚表向きに置いてから、今度は皆に四枚ずつ裏向きに配ります。これで準備は完了です。

 親(前のゲームで一番勝った人か、じゃんけんで一番勝った人)からはじまりまして、あとは一枚出して一枚めくるというおなじみのスタイルです。次の人はプレイヤーから見て右側の人です。真上から見ると時計と反対周りに進んでいくことになります。

 点数については上記のように問題ないのですが、役が違うのです。私の地方では「ふけ(40点)」「五光(30点)」「四光(20点)」「猪鹿蝶(20点)」「赤短(20点)」「青短(20点)」「雨流し」がありますが、「雨流し」の認知度が異様なほど低くて困っています。「雨流し」というのは11月の札である「柳を全部揃えると発生する役」で、「『ふけ』以外のその場の全ての役を無効にする」という他の役とは一味違った役です。なので柳のことを「」と言ったりもします。私はこう言います。あと「すすき」のことを「坊主」と言いますが、この認知度は比較的高いようです。

 書いていてふと思ったのですが、なぜ11月が柳なのでしょうね。柳の花が咲くのは春ですし、一番の見ごろは春だと思うのです。他に11月にふさわしいものが無かったからなのでしょうか。12月の桐は「キリ」なので納得できるのですが。(関連リンクおしゃべりな部屋

 両親とは花札でよく遊んでいたように思います。よく遊んでいたのですが、どうしても勝てない人が三人ほどいました。母方の祖父と、友人のSくんと、Sくんの父です。強い人にはやっぱり強い理由があって、それなりの知識があったようです。「アヤメに手出しゃぼんぼらけ」(標準語訳は「アヤメに手を出すやつはバカ」)「雨持ってらばタンばりででくる」(標準語訳は「柳を持っているなら短(赤短や青短)ばっかり出てくる」)と野次ってくるのでした。心理戦に非常に強く、翻弄されてしまうのです。野次もまたキレがありましたし(笑)

 アヤメは0点、0点、5点、10点と点数が低いのみならず、役にも絡まないのでそれほど重要視するカードでもなかったようです。具体的にはアヤメの10点を持っているよりも、サクラの0点の方が赤短や20点に結びつくこともありますしね。10点でも結局取るときには二枚ペアで取るわけなので、最高15点にしかなりませんし。

 また「雨流し」を狙っているときは「赤短」「青短」はさほど重要ではなく、大事なのは点数なので、5点にしかならない「赤短」「青短」を捨てていくということですね。なぜこれが野次なのかというと、「短」と「痰」を掛けているからです。ちょっと汚い(汗)

 実は一番言いたかったのは秋田弁のことなのですが、なんとスルーしてしまいました。カードを混ぜることを「てんきる」と言います。地べたに置いてかき混ぜるときにはあまり使いません。主に、手の上で揃えながらしゃっしゃっと混ぜている様子を「てんきる」と表現するのです。これは守備範囲の狭い言葉で、「てんきって!」(標準語訳は「カードを混ぜて!」)と言えば「トランプや花札のようなカードの類を、手の上でしゃっしゃっと混ぜること」を頼んでいることに決まっています。なので麻雀をしているときに「てんきる」という言葉が現れることはありません。

 「てんきる」の「きる」は恐らくカードを切るときの「切る」のことでしょうが、「てん」の意味が全く分かりません。「天」「点」「転」……、「てん」という音の語が多すぎます。柳の謎といい、「てんきる」の謎といい、やっぱりカードにはマジックの種が仕込まれていたんですね(笑)

 「雨流し」=花札で柳を四枚集めると発生する役で、全ての役を無効化する役。
 「」=(花札の)柳。
 「ぼんぼらけ」=バカ。マヌケ。
 「てんきる」=トランプや花札のようなカードの類を、手の上でしゃっしゃっと混ぜること。

関連リンク
【taku】の二人花札必勝法(一箇所だけ、ものすごく詳しいサイトがありました)

 04.09.24

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